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OPEC産油削減進行のなかで注目されるベネズエラ情勢

 2月9日から14日にかけて60ドルを下回る水準まで値を落としていたNY原油は、その後、2月末にかけて64ドルに達する強い足取りを見せた後に弱含みましたが、60ドルを割り込むことなく切り返すなど、底意の強さを窺わせる足取りとなっています。

 2016年12月に15年ぶりの協調減産で合意した石油輸出国機構(OPEC)とロシアが、その後も協調減産の延長を決定し続けるなか、原油在庫の縮小傾向が続いていることが価格を支えています。

 昨年11月30日に合意に至った内容は、現時点での日量約180万バレルの減産という協調減産の期間を2018年末まで延長すること、そしてこれまでの減産合意では減産の適用が除外されていたナイジェリアとリビアに対しても、両国の合計の産油量上限を日量280万バレルという2017年の水準以下にとどめることも決定されるという、協調減産の効果に対する期待を高めるものでした。

 というのも、これまでの協調減産合意下では世界的な石油需給の引き締まりを図ろうとしても、協調減産を受けて価格が上昇すればナイジェリア、リビアの両国が積極的に増産を進めれば協調減産の効果も薄れる可能性が警戒されていたからです。

 OPECとロシアの積極的な姿勢は、昨年10月下旬にそれまでの上値抵抗となっていた55ドルを突破したNY原油はその後も上昇指向を維持し、1月下旬から2月上旬にかけてバレル当たり66ドル前後まで値位置を切り上げる主因となってきたのです。

 国際エネルギー機関(IEA)が2月に発表した月次報告(MOMR)によると、OPECの1月産油量は3216万バレルで前月比では10万バレルの減少となりました。これは10カ月ぶりの低水準となりますが、産油量が減少したことで協調減産の順守率は前月に記録した129%から137%に達するなど改善を見せています。

 ただ、このOPECの産油量の減少については、その内容を注意深く見る必要があると思われます。というのも、OPEC加盟国内でも大幅に産油量が減少している国があるからです。それはベネズエラです。

 OPECの2月の月次報告によると、ベネズエラの今年1月の産油量は日量160万バレルでした。これはOPEC内の2月の産油量の中では第7位の産油量となります。

 このベネズエラの産油量は2015年までは日量230万バレル以上を維持していたにもかかわらず、2016年度には平均日量産油量は215万9000バレルに縮小、そして2017年は月を追うごとに減産傾向を強め、とうとう2018年1月には160万バレルまで落ち込んでいるという点です。問題なのはこの大幅減産は意図的に行われているわけではなく、不安定な経済情勢が原因となって大幅減産を余儀なくされているという点です。

 直近4カ月の同国の月間の平均産油量(日量)の推移をOPECの月次報告で見てみると、2017年1月は179.9万バレル、12月は164.7万バレル、そして1月は160.0万バレルでした。

 べネズエラの2017年1月以降の協調減産枠は197.2万バレルとなっているため、現在の産油量はこれを大幅に下回ることになります。

 主要産油国であるベネズエラは、政府歳入に占める石油の割合が約50%程度と石油収入に大きく依存する経済構造となっています。そのため、原油価格が2014年下旬以降、長期に渡って低迷したことで政府歳入の大幅な縮小さらには外貨不足の深刻化が余儀なくされました。

 なお、日本貿易振興機構(JETRO)によると、同国の2016年末時点の外貨準備高は、2014年度末時点の74億5700万$から32億6500万ドルへと急速に縮小しています。

 その結果、財政が悪化し慢性の物不足に見舞われると同時に、通過の過剰な供給もあって深刻な物価の高騰が促されています。1月8日にベネズエラ野党の独自集計の発表によると、2017年のインフレ率は2616%に達しています。

 財政悪化と極度の物不足は、ベネズエラ国営石油会社(PDVSA)の石油生産、探鉱、石油開発にも影響を与えており、チャベス前大統領時代に発表された2019年には日量産油量を600万バレルまで引き上げる計画を維持しているにもかかわらず、産油量の引き上げもままならない状態に陥っているのです。

 財政が傾くにつれて拡大した対外債務の支払いを巡りデフォルトに陥るという深刻な問題がたびたび浮上しています。特にこの懸念が一気に強まりを見せたのが昨年11月です。

 というのも、昨年11月2日、同国のマドゥロ大統領が一方的に対外債務の再編を求める方針を債権者に通告したからです。

 このようなベネズエラに対し救いの手を差し出したのがロシアでした。ロシアは11月半ばにはベネズエラに融資した31億5000万ドル(およそ3390億円)に関する再編に応じる合意書に署名し、融資返済期間を10年に延長することを決定するなど、ベネズエラの通告に対して迅速な動きを見せました。

 ここで注意をしなければならないのが、このベネズエラにとっては救いの手となったこのロシアの再編に対する合意が本当にベネズエラを救うことになるか、という点です。

 というのも、今回の合意ではロシア国営の石油会社ロスネフチに対する国営ベネズエラ石油 (PDVSA)の債務は含まれていないからです。さらにロスネフチのPDSVAに対する債務の担保として同社の子会社である米国の製油会社、CITGOの株式が提供されていることで、PDSVAが債務不履行に陥ればロスネフチにCITGOの経営権が移譲される可能性もあるのです。
 
 ロシアの国営石油会社に米国の石油会社の経営権が移譲される可能性が高まることになれば、米ロ間の緊張も高まるリスクが生じます。石油需給面という観点からだけではなく、地政学リスクという観点からも、ベネズエラの抱える財政問題とその行方が注目されます。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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