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金市場の下値指向は今後も続くのか

 NY金市場では2月27日の取引で急落場面を演じました。続く28日の取引では下げ渋りとなりましたが、中心限月の4月限の終値は1317.90ドルと1320ドルに回復することなく引けています。

 急落となった27日の動きを振り返ってみると、26日の取引を1332.80ドルで終えた中心限月の4月限はこの日、1334.70ドルと買われて取引を開始しました。その後、一時的とはいえ1338.40ドルまで値を伸ばしています。

 しかしながら、その後に売り込まれて1314.40ドルの安値を付け、引けにかけて若干の買い戻しが見られたとはいえ、それでも終値は1318.60ドルにとどまりました。前日比で見ると14.20ドルの下落となります。

 当初は堅調に取引を開始しながらも、急激に地合いが崩れたわけは、この日行われたパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言にあります。

 同議長にとっては初めてとなる米下院金融サービス委員会における証言で、同議長は「経済は強くなっている」、「インフレは目標に向かっているとデータは示唆」、「向こう2年間は良好な経済を予想。」と発言しました。

 これらの発言は、同議長が米国経済について強気な見通しをもっているとの見方を強めると同時に、FRBによる追加金利引き上げの回数は、これまでの3回から4回へと引き上げられるのではないか、観測を高めたのです。

 金利の引き上げは金利を産む金融資産にとっては強気な要因になります。しかしながら、金は基本的に金利を産まないとされるため、パウエル議長発言を受けて追加利上げ観測の増加観測が高まったことは金市場においては弱材料となり、NY金は前述のように売り込まれてしまいました。

 この同議長の米経済に対する強気な発言は28日に入ってからも尾を引き、CMEのFEDウォッチによると、年4回以上の利上げ確率は前日の32%から35%まで上昇しています。

 なお、年内には3月、5月、6月、7月、9月、11月、12月、計7回の米連邦公開市場委員会(FOMC)の開催が予定され、そのうち議長が記者会見を行う各四半期末(3月、6月、9月、12月)の会合は4回を残しています。

 時期的にも年内に4回の追加利上げが決定するには十分な時間があることも、追加利上げペースの加速化観測を後押しする一因となっています。

 追加利上げ観測の回数が4回に引き上げられるとの見通しが浸透しつつあることは、金市場にとっては上値を抑制する要因となります。そのため、今後は金価格が浮上するたびに追加利上げが意識されて転売が入るというパターンを描くと思われます。

【ETFの現物保有高は増加傾向を維持】
 ただ、同時に金価格がこのまま下値を探る足取りを維持する可能性は低いと考えられます。というのは、金価格の下落にもかかわらず金の上場投資信託(ETF)の現物保有高は2月12日以降の増加傾向を維持しているからです。

 ちなみに、金ETFのうち最大規模であるSPDRの残高は2月12日時点では820.71トンでした。その後、一時的な減少場面が見られながらも増加傾向を維持し、2月26日時点では831.03トンに達しています。

 注目されるのは、前述のようにパウエル議長による発言を受けてNY金は27日に急落しましたが、それにもかかわらず金ETF残高は減少することなく現地28日時点も831.03トンの残高を維持している点です。

 金ETF残高の推移は安全な投資先としての金需要を端的に示す指標と形容されることが多々ありますが、金ETF残高が増加後の金価格急落にもかかわらず、減少に転じることがなかった背景として考えられるのが、その安全な投資先としての需要の根強さでしょう。

 その背景は米国では株式市場での不安定な足取りに対する警戒感が強まっているからです。

 米株式市場では昨年11月下旬に上昇指向を強めたダウ工業株30種平均は今年1月26日に2万6616.71ドルを付けるまで上昇トレンドを維持していました。しかしながら、その後は急落に転じて2月9日の取引では2万4190.90ドルまで値を落としています。

 2月12日以降には再び上昇指向を強めていますが、2万6500ドルを超える水準から一気に2万4190ドル台まで値を落としたことで、堅調な株式市場の足取りがいつ崩れるか分からない、との警戒感が強まりました。この警戒感が安全な投資先としての金需要を刺激していると見られます。

 実際、直近の金ETF残高の拡大傾向の起点となる時期が、ダウ工業株30種平均が急落後に再び地合いを強めた時期と重なることが、株式市場のリスクを回避するための金需要の高まりを示唆していると考えられます。

 パウエル議長の思わぬ米経済に対する強気な発言を受け、追加利上げのペースを加速化させるとの思惑が強まったことは金価格を大きく下押す要因となりました。

 しかし、同議長の発言は米国株式市場において強気と捉えられて株式市場の底固い足取りを支援すると見られると同時に、この株式市場の動きを受けてリスク回避のための買いが金に集まってくると予想されます。

 そのため、目先のNY金の上値は重いと見られながらも、パウエルショックを織り込んだうえで1320ドルを大きく下回ることなく推移するのではないでしょうか。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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