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大統領交代で白金市場はどう変わる

 南アフリカでは2月14日にジェイコブ・ズマ大統領が辞任を表明しました。これを受けて新大統領には、昨年12月に開催された5年に一度開催される党大会、「アフリカ民族会議(ANC)」党大会において新党首に選出されたシリル・ラマポーザ副大統領が就任しました。

 ズマ大統領による政権運営機関は9年に渡りましたが、同大統領政権下では汚職や縁故主義という問題を抱えていたこともあり、新しい大統領の誕生は南アフリカの政治、そして経済に新しい光をもたらすとして期待が高まっています。

 実際、ラマポーザ氏が新総裁に選出される直前の昨年12月14日には対米ドルで13.50ランド前後での推移となっていた南アフリカの通貨ランドは、同氏が新総裁選出の様相を強めるなかで12.70ランド前後まで上昇しました。

 また、ラマポーザ新党首選出を受けて新大統領誕生に対する期待感が高まるなか、南アフリカの通貨ランドはその後もドルに対して強含んで1ドル=11.80台~12.10台で推移していたところ、新大統領の就任が伝えられたことで11.50ランド台までランド高が進んでいます。

 その後も1ドル=11ランド台での推移が続いていることは、ラマポーザ大統領に対する市場の期待の強さを示していると言えます。

 それでは、この新大統領の就任は白金価格にどのような影響を与えると考えられるのでしょうか。

 まず考えられるのが、ランドを押し上げる可能性でしょう。前述のように新大統領就任に対する期待感から南アフリカの通貨ランドは米ドルに対して上昇傾向にあります。南アフリカは世界最大の白金輸出国だけに、同国の通貨ランドが上昇することはドル建て白金価格を押し上げる要因になってきます。

 なお、NY白金は2月9日まで下降トレンドにあり、960.30ドルまで値を下げていたものの、翌営業日の2月12日には反発に転じ、その後は続伸して1000ドル台を回復しています。

 そのうちズマ大統領が辞任を表明する直前の2月14日から辞任表明直後の2月16日までの間には971.20ドルから1015.80ドルのレンジがあることから、南アフリカの大統領交代劇が白金価格に何らかの影響を及ぼした可能性はあります。

 ただ、この時期に重ねてNY金が上値追いとなっているため、この間の白金価格の上昇はNY金の動きにも支援された側面があり、南アフリカの大統領交代劇が必ずしも白金価格の上昇に直結しているわけでではないことに注意が必要でしょう。

 ちなみにNY金の中心限月である4月限は2月14日の取引を1331.90ドルで開始しましたが、その後、1358.60ドルまで値を伸ばして1358.00ドルで終えたほか、その後も高値圏での往来を維持し16日の取引では一時的ながら1364.40ドルに達しています。この時のNY金は、米小売売上高の落ち込みや米国の双子の赤字に対する警戒感を背景としたドル安や逃避買い需要が高まったことが価格を押し上げる要因となっていました。

 なお、南アフリカの通貨ランドに影響を及ぼす同国債券に対する格付けに関してもS&P社がすでに大統領選挙の結果が直ちに格付けに反映されることはない、との見解を示していることもあり、大統領選による影響はすでに市場に織り込まれた感があります。

 その一方で注意したいのが、新大統領就任に伴ってランドが買われる動きが見られたとはいえ、今後もランドが強い足取りを維持できるかどうかという不安要素があることは白金市場にとってはかえって重石になる可能性があるという点です。

 というのも、ラマポーザ氏の大統領就任が同氏への圧倒的な支持によるものではないと見られるからです。

 昨年12月の次期総裁選出の得票数を振り返ってみると、ラマポーザ氏の得票数は2440票だったのに対し、ズマ元大統領が後見人となったズマ氏の元妻であるドラミニ氏の得票数は2261票とラマポーザ氏にかなり肉薄していました。つまり12月の総裁選時点では政党内には元大統領派が依然として根強い勢力として存在していたのが確認出来るのです。

 それから2カ月足らずでズマ氏は大統領の座を去りラマポーザ氏が大統領に就任することになったわけですが、それはラマポーザ氏の政策や手腕に対する期待が高まったことが背景、というよりも、政党の党首に就任したことで同氏が持つ党首としての権限に対する歩み寄りが見られたことが背景と考えられます。

 なぜなら、南アフリカの下院選挙では有権者が記入できるのは政党のみであり、票を得た政党のなかから選挙に当選できる候補者は各政党の名簿に掲載される順番となっているからです。

 つまり、昨年12月時点では次期総裁選選出時にはズマ派だった議員が、ラマポーザ氏が政党の党首に就任すると同時に政党の名簿作成の権力を持ったことで名簿への記載を巡る思惑からラマポーザ派へと鞍替えし、これも一因となって今回の新大統領誕生に至ったと考えられるのす。

 そのため、南アフリカでは新大統領が誕生したことで南アフリカ政権がある程度の浄化が行われたとはいえ、その政権に属する議員には大きな変化は無く、南アフリカの政策が大きな変革を遂げることが出来るかは大統領の腕にかかっているのが現状と言えるでしょう。

 なお、注目しておきたいのは、ラマポーザ氏が大統領に就任したことにより、ズマ政権時に採用された黒人優遇措置に対する変化が見られる可能性が出てきているという点です。ズマ氏は自らの出身族であり、南アフリカ最大規模を誇るズールー族の支持を基盤にして政権を運営してきました。

 白金産業における優遇政策としては黒人資本の引き上げなどを盛り込んだ鉱業憲章の改正案が挙げられます。この鉱業憲章の改正案において黒人資本比率は2014年にそれまでの15%から26%に引き上げられただけでなく、その後も30%までの引き上げ案が提示されましたが、この引き上げ期間が一時的なものかどうかに関し、鉱物資源省と生産業者の間で見解が異なっていることで対立が生まれることとなり、これが同国の白金産業における新規投資のブレーキにもなっています。

 これに対しラマポーザ氏は少数民族の出身であるため、一定の民族に対する優遇措置を採る可能性は低いと考えられ、白金産業においても人種間の融和的な態度を採ることが期待されます。同氏が大統領に就任してまだ間がなく、これからどのような政策が展開されていくか、予測の域をでません。

しかしながら、ズマ氏とは異なり、人種間融和的な政策が展開されるようであれば、白金産業における政策面でのわだかまりも解消に向かうことが見込まれ、これは南アフリカにとっては白金産業の立て直しになると同時に、白金市場においては停滞している南アフリカの白金増産の可能性、という形で現れてくると考えられます。

 今後、ラマポーザ大統領がどのような政策を実施していくのか、期待通り人種間緩和的な政策を推し進めていくのかどうか、注目されるところです。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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