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金市場は投資環境の変化で地合い軟化へ

 現地1月25日には中心限月が1370.50ドルまで上昇する勢いを見せたNY金の地合いが、その後、緩んだ状態が続いています。

2月7日の取引では中心限月の終値は1320ドルを割り込み1314.60ドルとなりました。

 このNY金の方向性を決定づけたのが、米国の雇用統計でしょう。今月2日に米労働省は1月の雇用統計を発表しましたが、今回の報告では注目の非農業部門就業者数は前月に比べて20万人増と、事前予測の18万人増を上回りました。

 また前月発表分も14万8000人増から16万人増へと上方修正されています。

 非農業部門雇用者数は昨年10月分が26.1万人増、11月分が22.8万人増と好調な内容が続いています。何より年が明けてからも20万人台の雇用者数の増加を記録したことは、2018年に入った後も米国の雇用の伸びが続いている様子を窺わせています。

 ただ、今回の雇用統計ではこの雇用者数の増加以上にインパクトを与えたのが賃金の上昇率でした。時間当たりの賃金は前雇用者ペースで見た場合、前月比では0.3%の伸びとなったものの、前年同月比では2.9%増と改定された前月の2.5%増をも上回り、2009年6月以来の伸びを見せたことです。

 米国の雇用統計ではこれまで非農業部門雇用者数の順調な増加は確認されながらも、賃金上昇率は伸び悩んできました。その原因としては物価の上昇ペースが鈍いなかではコストが上昇してもそれを製品価格に転嫁するのが難しく、その結果として賃金が抑制されるという流れにあると考えられます。

 そのため、賃金の上昇はインフレの前兆として捉えることができます。今回の雇用統計で賃金が大幅な上昇を見せたことにより、米国ではいよいよインフレ率が上昇するとの期待を強めることになり、これが追加利上げ観測を後押しすると同時に、好調な米国の経済見通しを強めた結果、ドル高が演出され、一方の金には下落圧力がかかる、という構図が出来上がったのです。
 
 問題なのは、この賃金上昇率を今後も維持できるか、ということです。これまで米国では雇用者数の増加が続いているにもかかわらず、賃金の上昇率が抑制される不均衡な状態が続いていました。

 しかしながら、今回、今回賃金の上昇が確認されたことで旺盛な労働者需要が賃金上昇圧力の強まりという形として現れたとも考えることが出来ます。

 実際に米国の労働環境が今後も賃金上昇を伴って拡大し続けるかどうかは今後の統計で判明することであり、現時点では見通しには不透明感が残ると言わざるを得ません。

 とはいえ、これまで雇用者数の増加は確認出来ながらも賃金上昇率がこれに伴わなかったことで追加利上げに向けて積極的な姿勢を取れなかった当局者にとって、今回の報告内容は待ちかねていた報告といえ、3月の連邦公開市場委員会(FOMC)における追加利上げ実施を見込む声が大いに高まることが予想されます。

 注意したいのは3月の追加利上げ観測のみが強まっている、という点だけではありません。賃金上昇率はインフレ率の上昇を誘発することから、賃金の上昇が続くようであれば今年は3回が見込まれている追加利上げの回数の増加見通しを強めかねない点にも着目しておく必要があると思われます。

 今回、米国の雇用統計における賃金の上昇を受けて金市場では地合いが一気に軟化しました。特に追加利上げ観測が一気に強まったことによって、目先のNY金は1300ドル前後まで下押される可能性が出てきています。

 この金価格下落に歯止めをかけるとすれば、欧州の経済情勢が挙げられます。欧州の経済に強気な見方が台頭し、ユーロ高・ドル安が演出される場面があれば、これが金市場にとっては買いを促す要因となってきます。特に欧州でも米国と同様にインフレ率の緩やかな上昇が続いており、インフレ目標達成の可能性の高まりが指摘されています。

 目先は緩やかな下降トレンドを描くと予想されるNY金ですが、その下落を抑制する要因としての欧州経済の動向にも注意が必要でしょう。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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