FX外国為替情報のKlug(クルーク)
為替、海外投資でハイリターンを得るためのニュース、レポート、コラムを掲載

原油価格の上昇はいつまで続くのか

 NY原油価格は年が明けてから上昇への方向性を強め、期近つなぎ足で2月限は1月11日、16日、そして23日と64.80ドル台と2014年12月以来の高い水準まで値位置を切り上げるなど、65ドル突破を窺う足取りを幾度も見せています。

 NY原油のここ最近の動きを振り返ってみると、昨年11月上旬から年末にかけては58ドルを中心とするもちあい場面を演じていました。それが、現地12月26日の取引ではリビアのパイプライン爆発をきっかけにして60ドル手前まで値位置を切り上げたのです。
 
 この日はリビア最大級のワハ油田から原油輸出ターミナルにつながるパイプラインが爆発したことを受け、リビア国営石油会社(NOC)が同国の産油量は日量7~10万バレル減少するとの見通しを明らかにしました。

 リビアは内戦で減産を強いられた後にようやく産油量が回復してきただけに、再び減産に生じるきっかけとなったことが価格上昇の背景となりました。

 なお、この時点のNY原油はそれまでの58ドル前後という価格水準を上抜いたとはいえ、60ドルにようやく達したところと上昇したとはいえ伸び悩みとも捉えられる程度の上昇にとどまっていました。

 しかしながら、年が明けた後、NY原油は一気に上げ足を強めます。その背景となっていたのは、米国の原油在庫減少を受けて過剰在庫が解消に向かうとの見方、米国の大寒波を受けた暖房用としてのエネルギー需要増加観測と、これを裏付ける高い製油所稼働率、中東の地政学リスクなど、様々な強気材料でした。

 このような強気要因を手掛かりに買い進まれて64ドルに達した後は伸び悩みつつありますが、それでも1月21日には石油輸出国機構(OPEC)とロシアが今年末以降も減産措置を続ける協力体制を継続する可能性を改めて示す、という新たな材料が浮上しています。

 これを受けて引き続き世界の石油需給は引き締まる傾向を維持するとの見方が強まるなか、現地23日の取引は前述のように2014年12月以来の水準に迫る64.88ドルまで上昇しているのです。

 それでは、この原油価格は今後も強い足取りを維持できるのでしょうか。

 恐らく、この強い足取りを継続するのは困難と考えられます。というのも、やはり価格が上昇すれば同時にシェールオイル増産が見込まれ、これによって引き締まり傾向にあった世界の石油需給が再び緩和に向かう可能性が想定されるからです。

 実際、現地1月19日に発表された国際エネルギー機関(IEA)の月報、Oil Market Reportでは、2018年度の非OPEC産油国の大幅増産の可能性が示されています。

 同月報によると、2018年における非OPECの増産幅の見通しは前年度の60万バレル(日量)を大幅に上回る170万バレル(同)が見込まれています。

 2017年の原油価格は11月上旬までは55ドルを上値抵抗にして推移していました。しかしながら、年末にかけて55ドルを超える水準まで価格が上昇したことにより非OPECの産油意欲が刺激された、もしくはこの水準を超えたことでシェールオイルの採算性が高まるとの見方が、この大幅増産見通しの根拠になっていると考えられます。

 さらに注目されるのが、一方の需要見通しが130万バレル(日量)の増加とされて
いる点です。つまり、2018年は供給量の増加幅を需要の増加幅が下回る結果、40
万バレル程度(同)の余剰が生みだされる可能性が指摘されているのです。

 ここで注意したいのが、このIEAの見通しはOPEC、ロシアの2018年末までの協調減産を考慮したうえでの見通しであるという点です。協調減産が行われても、その程度によるとはいえ、需給は僅かに緩む可能性が指摘されているのです。

 つまり、OPECとロシアの協調減産が行われて初めて世界の石油需給は均衡に近づくという構図に変わりはなく、OPECとロシアは原油価格を高値で安定させるためには協調減産をせざるを得ない、という状況が改めて浮かび上がってくるのです。

 さらに原油価格にとっての冷や水になりかねないのが、原油価格が60ドルを超えてきたこの時期にロイヤルダッチシェル社がシェールオイル増産に対する強い意欲を示している点です。

 フィナンシャルタイムス社が伝えたところによると、同社の最高経営責任者であるベアーデン氏は、今後10年間の同社の成長はシェールオイルによるところが多い、と語っており、シェールオイル生産事業により力を注いでいく可能性を示唆しています。

 原油価格の上昇が続くようであれば、シェールオイル生産がより活発化し引き締まりを見せた世界の石油需給は再び緩和に転じる可能性に対する警戒感が高まり、これを受けて原油価格は下押されることになりそうです。

 そのため、65ドル手前まで上昇してきた原油価格が今後も上昇トレンドを継続するのは困難と考えられるのです。

 ただ、一方では価格が下落するようであれば今度はシェールオイル減産を背景とした需給引き締まりリスクが意識されることとなり、これが原油価格の下落を抑制する要因になってくると思われます。

 短期的に見た場合、大きく上昇した後だけに自律修正場面を演じる可能性が日増しに高くなっているうえ、協調減産なくしては需給の引き締まりをもたらせないという現状からは価格がここから一段の伸びを見せる可能性は低いと見られます。

 しかしながらこの価格水準に達して初めて可能になる増産分が存在することを考慮すると短期の調整のための大幅安を除けば、価格の下落余地も乏しいのはないでしょうか。
 
【ご注意】本ブログに掲載されている情報の著作権は株式会社みんかぶに帰属し、本ブログに記載されている情報を株式会社みんかぶの許可無しに転用、複製、複写することはできません。

平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

メールマガジン

山岡和雅が毎日発行!
外国為替ディーラーの心の中

毎日の為替相場を、市場参加者の目を通して判り易く解説。為替ディーラーの本音は?【まぐまぐ殿堂入り】

バックナンバー

朝刊 ニューヨーク為替市場レポート
米国市場の動きを、朝一番に配信!! FX、外国為替、米国株、米国金利など、テレビやWEBサイトでは得られないニューヨーク金融市場情報のほか、アナリストの独自解説も配信します。

バックナンバー

powered byまぐまぐトップページへ