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パラジウム高騰の背景とこれから

 パラジウム価格が高騰しています。12月13日現在のNY市場の中心限月3月限の終値は1004.5ドルに達しました。一方の東京市場の中心限月は11月上旬以降、3500円を下値サポートにしての高値圏での高下が続いています。

 パラジウムは2016年2月半ばまでは500ドルを前後する足取りが続いていました。しかしながら、その後は上げ足を強め、短期間での高下を繰り返しながらも、今に至るまで上値を窺う足取りが続いています。

 その結果、今年9月には白金価格を上回る水準まで価格が上昇し、従来の白金高のパラジウム安という価格関係が逆転しています。特に、白金は9月に入ってから下方への圧力を強めて低迷場面を演じ、12月に入ってから中心限月は900ドルを割り込んだ水準での推移が続く一方、パラジウムは中心限月が16年ぶりの高値となる1022.80ドルに達した後も1000ドルを前後する底意の強い足取りを見せるなど、その動きは一段と違いを見せています。

 このようなパラジウム価格の上昇の背景となっているのが、供給不足に対する警戒感です。貴金属の調査会社であるジョンソン・マッセイ社によると、近年のパラジウム供給不足量は2015年度が30万オンス、2016年が10万オンスでした。しかしながら、今年は供給不足量は大幅に拡大し97万オンスに達する見通しとなっています。

 その一方で世界のパラジウム生産量は5%程度の減少が見込まれるとの見通しを同社は示しています。

 また、貴金属調査会社GFMSが予測する世界のパラジウム需給は2015年は37.9万オンスの供給不足、続く16年は67.3万オンス、17年が137.0万オンス、そして翌年18年には160.6万オンスへとこの4年間で供給不足幅は急激に広がっていくことが予測しているのです。

【パラジウムはロシアの在庫枯渇が供給不足の背景】
 それではパラジウムの供給不足幅はなぜこのように急激に拡大していく見通しとなっているのでしょうか。供給面から挙げられる原因が、ロシアの地上在庫の枯渇です。

 ジョンソンマッセイ社の報告によると、世界のパラジウム生産量は2017年度が663万1000オンスでした。そのうち、南アフリカの生産量が258万1000オンス、そしてロシアの生産量が268万4000オンスとなっています。つまり、この2か国の生産量が世界総生産のうちの約80%を占めていることになります。

 ただ、ここで重要となってくるのがロシアの生産量です。というのも、ロシアはかつて世界最大のパラジウム生産国だったからです。そのロシアの生産量ですが、年間生産量は2008年以降の過去10年間は概ね270万オンス前後となっています。これは2017年現在と大きな変化はありません。

 大きな変化があったのは年間供給量です。というのも、2017年度の年間供給量は生産量の268万4000オンスと同量であるものの、2011年度までは同国の年間生産量は270万オンスでありながらも、供給量は350万オンス前後を維持していたのです。

 この供給量の違いは在庫量の変化が背景となっています。ロシアの地上在庫は2012年から大幅に減少しはじめ、2014年以降は枯渇した状態にあり、それが影響して同国の供給量が縮小しているのです。

【パラジウム自動車用触媒需要が10年間で22%の伸び】
 それでは需要面ではどのような変化があったのでしょうか。年間需要(回収分を含まず)の推移を見てみると、2008年時点の829万オンスから2017年には1013万オンスへの拡大が見込まれています。10年間で約22%の伸びが見られているわけですが、この大幅な需要の増加をけん引しているのが自動車触媒用の需要です。

 2008年時点では446万5000オンスだった世界の年間自動車触媒用需要は、2017年には821万7000オンスへの拡大が見込まれています。これに対し白金の自動車触媒用需要はというと、2017年度が316万オンスの見通しとなっています。これはパラジウムの自動車触媒用需要を大幅に下回ります。

 さらに、白金の自動車触媒用としての需要は2009年度にはリーマンショックの影響もあって218万オンスに落ち込みましたが、2010年以降は300万~330万オンス前後での推移が続いており、伸び悩んでいるのが現状なのです。

 自動車用触媒としての需要の大幅な増加がパラジウムの価格上昇を促す主因になって現在の価格水準までの上昇が引き起こされ、とうとう白金の価格とパラジウムの価格が逆転しているのです。

【プラチナとの価格逆転で価格の優位性が消滅】
 ただ、注意したいのはパラジウムの自動車触媒用需要がこのような大幅な増加を見せたのは、白金に比べてパラジウムが廉価だった、という事実が背景となっています。そのため、白金とパラジウムの価格が逆転した以上、パラジウムの価格優位性が消滅し、その結果、今後、パラジウムと白金の需要にも変化が生じる可能性が高まっているという点です。

 とはいえ、ロシアの地上在庫枯渇を受けて供給が引き締まっているパラジウムの生産量の増産が行われた場合、その副産物として白金も生産されるため、パラジウムには供給不足が懸念される一方、白金には供給潤沢感が付いて回ることが見込まれます。

 さらに、パラジウム市場はその規模の小ささゆえにスクイーズが起きるリスクを常に抱えており、2001年には1月下旬には1100ドルを目指す足取りを見せていたものの、その後、反落に転じてその年の10月下旬には310ドル台まで下落しています。

 現在、パラジウムのリースレートは9%台と需給がひっ迫した状態を示す水準にあります。当面は供給が不足した状態が続く可能性が高く、これを受けて引き続き高値圏での往来が続くことが見込まれます。

 しかしながら価格高騰を促した背景が白金よりも廉価だったという事実から見ると、価格高騰によって需要減少見通しが強まることになりそうで、市場規模から見ても価格が大きく下落するリスクが高まっていると言えるでしょう。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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