FX外国為替情報のKlug(クルーク)
為替、海外投資でハイリターンを得るためのニュース、レポート、コラムを掲載

原油価格のこれからを考える

 NY市場ではWTI原油価格が57ドルを突破する水準まで上昇しました。NY原油の期近限月がこの水準まで上昇したのは、2015年6月下旬以来のことになります。

 そのきっかけとなったのが、サウジアラビアでの政情不安でした。大手メディア各社が伝えたところによると、サウジアラビアではサルマン国王が反汚職委員会を設置し、その委員会長にはムハンマド皇太子が就きました。

 この反汚職委員会が設置されるや否や、先週末には11人の王子を含む政治界、経済界の重鎮が一斉逮捕されたのです。

 今回、逮捕された王子の中には投資家として名高いアルワリード・ビン・タラール王子も含まれていますが、同王子はTwitterを初め、世界の主要企業の大株主となっているため、同王子の逮捕により王子の投資に関連する企業への影響に対する懸念も高まっています。

 また、政財界の有力人物が含まれているため、拘束によって将来の見通し不透明感が強まるようであれば、これらの人物が抱える企業に対する融資の返済を銀行から迫られる結果、サウジアラビア国内の大手企業が資金難に陥る可能性も考えられます。

 同時に、拘束された人物との関わりを避けるために関連企業との事業提携取り消しを求める動きも見られ始めているようです。そうなればサウジアラビア国内の経済混乱も大規模なものとなる可能性があると考えられます。

 なお、今回逮捕された人物のなかには建設コングロマリットのビンラディン・グループ会長のバクル・ビン・ラディン氏が含まれています。

 大手通信社のロイターが伝えたところによると、同氏が会長を務めるビンラディン・グループは、国内の大型案件を掌握してきたものの、昨今の原油安が影響し、昨年度には政府案件に関する支払いの延期やプロジェクト停止により数十億ドル規模の債務再編に直面していました。

 原油価格の低迷が続くなかで、サウジアラビアはOPEC加盟国や非加盟国の主要産油国のまとめ役となり、これまで減産枠を設定するなどして原油価格引き上げを促すための政策を実行してきました。

 しかしながら原油価格の低迷がサウジアラビア建設コングロマリットに債務再編を余儀なくされるほどの影響を与えていたという状況から見る限り、サウジアラビアとしては何としても原油価格を引き上げる必要に差し迫られており、その必要性から動かざるを得なかったという事情も窺えるところです。
 
 さらに、皇太子にとって王位後継の際にライバルとなる可能性がある人物やサウジアラビア政府の政策にそぐわない人物が一斉逮捕されたこと、その逮捕劇があまりにも唐突だったことを受けて、サウジアラビア情勢に対する警戒感が高まっていると見られます。

 いつどのような事態が発生してもおかしくないという印象を与えたことで、サウジアラビアへの投資リスクに対する意識は一期に高まっていると考えられるだけに、今後、サウジアラビア国内への国外からの投資意欲が大幅に後退する可能性は否めません。

 サウジアラビアでは石油探鉱、採掘、生産海外からには外国資本による投資は禁止されていますが、過去には外資導入プロジェクトが計画されたこともあるうえ、石油依存体質からの脱却を目指す「ビジョン2030」に向けて規制は緩和傾向にありました。

 この規制緩和の動きによって触発されていた外資流入の動きも今回の一斉逮捕で冷や水を浴びせかけられた可能性があり、落ち着きを取り戻すまでには時間を要することになりそうです。

 OPEC加盟国内で最大の産油量を誇り、それが故に強い発言力を持つサウジアラビア情勢に対する警戒感の強まりは、石油供給におけるリスク要因として意識され、これが当面は価格を下支えする材料になってくると見られます。

 注目されるのは、だからといって原油価格が上昇できるのかどうかという点です。

 今回の一斉逮捕を受けて上昇していた原油価格が週が明けると反落に転じているのは、価格が上昇するとシェールオイル生産量が増加し、これによって供給量の拡大が促されるとの見方が背景となっています。

 ただ、1つのリグからの産油量の減少から窺われるようにシェールオイルの生産性はピークを超えたと見られることもあり、価格が上昇したからといって、これまでのように直ちに増産となる可能性は低下していると考えられます。

 原油価格が約2年ぶりの高値まで上昇したことが産油量にどのような影響を与えるのか、その推移を確認する必要がありますが、サウジアラビア情勢の不安定化に対する警戒感、今回の一斉逮捕により強まるムハンマド・ビン・サルマン皇太子の権力、そしてシェールオイルの生産性に対する疑問などから、価格がこれ以上上昇する余力は現時点ではないにしても、50ドル以下という水準まで低下する可能性は弱まっていると考えられます。

【ご注意】本ブログに掲載されている情報の著作権は株式会社みんかぶに帰属し、本ブログに記載されている情報を株式会社みんかぶの許可無しに転用、複製、複写することはできません。

平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

メールマガジン

山岡和雅が毎日発行!
外国為替ディーラーの心の中

毎日の為替相場を、市場参加者の目を通して判り易く解説。為替ディーラーの本音は?【まぐまぐ殿堂入り】

バックナンバー

朝刊 ニューヨーク為替市場レポート
米国市場の動きを、朝一番に配信!! FX、外国為替、米国株、米国金利など、テレビやWEBサイトでは得られないニューヨーク金融市場情報のほか、アナリストの独自解説も配信します。

バックナンバー

powered byまぐまぐトップページへ

URL変更のお知らせ

KlugFXのURLはhttp://klug-fx.jpへ変更となります。お気に入りやブックマークなどに登録されているご利用者さまは、お手数ですが下記の新URLへの変更をお願いいたします。

http://klug-fx.jp