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波乱の大豆市場でこれから注意したいこと

 シカゴ大豆は現地7月12日から13日にかけての取引で急落場面を演じました。この2営業日での中心限月である11月限の終値ベースでの下げ幅は55.75セントに達します。シカゴ大豆は、米国コーンベルト西部の高温熱波に対する警戒感から6月下旬から7月11日の取引にかけて大きく値位置を切り上げていました。

 ちなみに、6月29日時点の中心限月の終値は915.50セントでした。その後、7月11日には1,043.25セントまで値位置を切り上げているので、この時の米国コーンベルト西部における高温熱波に対する警戒感がいかに強かったか、が窺えます。

 その後に大幅反落となったのも、やはりコーンベルト西部での天気予報が背景となっています。厳しい熱波が続くとの事前予測を受けて価格が上昇したシカゴ大豆ですが、その後の天気予報を受けてコーンベルト西部の熱波も、事前に予測されていたほどには厳しいものにはならない、との予測が発表されたことが転売を活発化させ、これが価格の下落を促しました。

 天気予報次第で上下に波乱の展開を演じるのは、天候相場期ならではの動きといえるでしょう。

 それでは、この大相場を生みだしたコーンベルト西部の高温熱波は作柄にどのような影響を与えているのでしょうか。米国農務省(USDA)が発表している作柄報告によると、7月13日時点の大豆の作柄のうち「良」以上が占める割合は、前週の62%から61%へと低下しています。

 この「良」以上が占める割合は、今年度の作柄が初めて発表された6月12日付けの報告では66%となっていました。6月最後の発表となる6月26日付けの報告までこの水準が維持されていたものの、7月に入ってからはジリジリと「良」以上の割合は引き下げられており、最新の報告では61%まで低下しています。

 この「良」が占める割合が60%をわずかに上回る程度、という水準は、米国の大豆の作柄からみると低い水準と言えます。過去の動向を振り返ってみると、大豊作となった2016~17年度の場合、「良」以上が占める割合は生育シーズンを通して70%以上でした。

 ただ、作柄を見る時点で最も重要なのが、悪化する時期がいつになるのか、という点です。生育にはいくつもの段階が存在しますが、やはり、生産量に直接的な影響を与えることになる開花~着サヤが最も重要で、7月下旬~8月上旬の時期に天候に恵まれ、作柄が良好な状態、つまり「良」以上が占める割合が70%前後を維持できていれば、生産量が受ける影響も限定されると考えられます。


 大豆市場が大相場を演じたのも、大豆が開花~着サヤの時期を迎えつつあるなか高温熱波に見舞われたこと、そしてまさしく開花~着サヤが本格化する7月下旬も厳しい高温熱波が続く、との予測が発表されたことに理由があります。

 ちなみに、開花~着サヤの時期の高温熱波が最も警戒されるのは、干ばつにより生育状況自体が悪化することはもちろん、熱波によって開花が不良に終わってしまうと、実を結ぶための受粉もできない状態に陥ってしまうためです。受粉ができないため実を結ぶことができず、それが生産量の低下につながるのです。

 特に、今年の大豆の作柄は発表開始当初から「良」以上の水準は作柄発表開始以降、70%を超えることはない、良作とは言えない状態が続いています。

 それにもかかわらず、6月下旬からの高温熱波によるストレスを受け、作柄のうち「良」以上が占める割合は61%にまで低下しています。これ以上高温熱波が続くようであれば、間違いなく大豆の作柄のうち「良」が占める割合は60%を割り込み、今年の大豆生育は不作に終わるリスクが高まることになるでしょう。

 なお、7月から8月にかけての時期に作柄が悪化し、60%を割り込む水準まで低下した直近の例としては2011年が挙げられます。

 この年も熱波に見舞われており、作柄報告における「良」以上が占める割合は6月13日付けの報告では67%でしたが、その後、作柄は次第に悪化し、8月1日付の報告では60%まで低下しました。

 この時期の作柄悪化は、USDAの需給報告における生産量予測にも影響し、その年度の初めての生産量予測が発表される5月時点の予測で32億8,500万ブッシェルとされたこの年の大豆生産量予測は、7月時点では32億2,500万ブッシェル、8月時点では30億5,600万ブッシェルと急激に引き下げられました。

 注意したいのは、この年の作柄悪化傾向は6月から見られていたにもかかわらず、7月の需給報告には大きな修正は見られず、8月に入ってから大きな修正が見られている点です。

 これは、需給報告の発表は毎月10日前後であるにもかかわらず、7月の需給報告には7月1日時点までの状況しか反映されていないため、7月に入ってからの作柄悪化が生産量予測に反映されていなかったことが背景と考えられます。

 今年の場合、USDAの7月の需給報告では17~18年度の米期末在庫率は前月予測の11.7%から10.9%に引き下げられました。前年度からの繰り越し在庫の存在が供給を支えているとはいえ、今回の予測では生産量は42億6,000万ブッシェルに引き上げられるなど、高温熱波の影響は限定的にしか考慮されていないことが窺われます。

 そのため、作柄のうち「良」以上の割合が60%を僅かに上回る程度の状態が続くようであれば、もしくはさらなる悪化が見られるようであれば、6月下旬からの高温熱波の影響は次回の需給報告に織り込まれることが見込まれ、潤沢な需給見通しを見込んだ売りは手仕舞いを迫られる可能性があります。

 とはいえ、天候相場期だけにやはり注意が必要なのがコーンベルトでの天候です。7月下旬のコーンベルトの天候は、西部地区で引き続き高温になることが予測される一方で、平年を上回る雨量が見込まれる予報が発表されたかと思うと、その翌日には高温になると同時に、雨量も平年を下回る、という、穀物生育には大きなダメージを与えかねない天気予報が発表されるなど、見通しを立てるのが難しい状況が続いています。

 このようななか、今後、注意しておきたいポイントは、作柄のうち「良」以上が占める割合は60%を割り込んでくるのか、僅かに上回る程度に留まるのか、もしくは作柄の改善はあるのか、という点です。

 60%を割り込むことがあれば、8月の需給報告で米国の大豆生産量予測が大幅に引き下げられる可能性が高まり、60%程度の低い水準が続くようであればある程度の下方修正があると見られる一方、回復が見られるようであれば修正があったとしても僅かにとどまると予測されるからです。

 6月下旬~7月上旬にかけての高温熱波は大豆の作柄に悪影響を与えたのは確かで7月の需給報告には高温熱波の影響が織り込まれていないと見られる分、需給報告での修正を見込む動きが今後は広がっていくことになるでしょう。

 ただ、それでも降雨予測の際に市場で噂されるような作柄の回復が見られるようであれば需給報告での修正も限定的な物に留まると予測されるだけに、天候はもちろんのこと、実際にその天候が作柄にどのような影響を与えているかに注目する必要があると思われます。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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