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コモディティレポート(金)=インド、GST導入で金需要はどうなる

 インドでは7月1日から物品サービス税(GST)が導入されました。GSTはその名の通り、インド国内の物品やサービスが販売された際に課される税金のことです。そのGSTが今回導入に至った原因というのは、それまでの課税制度が複雑だったことが背景となっています。

 GST導入以前のインドでは、中央政府と州政府のそれぞれが憲法で徴税権を認められており、双方がそれぞれのルートや条件で課税を行っていました。その結果、課税が重複して行われる、州によって税率が異なる、徴税局が複数にまたがるなどの状況が発生していたのです。

 このような複雑な納税体制は、納税のための人的コストの上昇につながります。また、複雑な手続きゆえに、脱税や賄賂が横行する、または適切な節税対策を行うのが困難、さらには物品の州をまたいでの移動に時間を要する、などの問題を生じてきました。

 また、近年のイーコマースの発展により物品とサービスを明確に切り分けるのが難しくなり、その結果、課税対象が曖昧になるなど、既存の制度が現在の経済活動に追い付いていない、という状況も生まれていました。

 このような問題がインドの経済成長にネガティブな影響を与えているとの認識が強まる一方、適正な徴収、手続きの簡素化などがインドの経済成長には必要との見方が強まったことで今回のGST導入に至っています。

 GSTが導入される際に最も注目されたのは税率でした。それまでの税率と新たな税率に違いがあるようであれば、その物の価格が上昇または下落することになるからです。

 金も例外ではありません。インドは中国に次ぐ世界第2位の金消費国です。そのインドにおいて金に対する税率が大幅に引き上げられるようであれば、同国の金消費意欲を停滞させる可能性があるため、金の実需を予測するという面からも、金に対する新たな税率が注目されました。

 その金に対するGSTですが、財務省中央間接税局は6月3日に3%と発表しました。これは事前予測の5%を下回ります。

 インド国内の金販売価格にはGST以外にも様々な税が付与されます。例えば、GST以前、インドでの金の販売価格は、金の価格に対して10%の関税、消費税1%、付加価値関税1.2%が付加された価格となっていました。

 GSTの導入によってこの税率のどこに変更があるかというと、消費税、付加価値関税が廃止される一方でGSTが付加される、というところにあります。また、金の宝飾品を購入する場合には、その加工というサービスに対しても課税されることになるうえ、加工がどこで行われたかによっても税率に違いが出てきます。

 そのため、金価格に対する税率のトータルは、GST導入前の12.2%に対し、GST導入によって13~14%程度へと上昇することが見込まれることになります。

 その結果、実際に購入する側にとって金の購入価格はGST導入以前よりも0.8~1.8%程度上昇することになります。

 GST導入により金価格は確かに上昇しますが、事前にGSTは5%と見られていたことを考慮すると、新たな税制が導入されることによる金価格の上昇率は事前の懸念に比べてごく限られたものになったと考えられます。

 とはいえ、やはり価格の値上がりは消費者の心理にネガティブな影響を与えるでしょう。GSTが定着し、消費者の価格に対する慣れが生じるまでは、金を買い控える動きが広がってもおかしくはありません。

 特に今年に関しては上半期と下半期とで需要にだいぶ差が生じる可能性が出てきています。

 ただ、これはGST導入による価格の上昇が直接の原因ではありません。というのも、インドではGST導入以前、税率の見通しが付かない中で価格の上昇に対する警戒感が高まっていたことから、年間の需要の手当てを上半期で済ませようとの目的から、金購入が活発に行われていたのです。

 GFNSのシニアアナリスト、サドヘシュ・ナムビアス氏によると今年上半期のインドの金輸入量は450トンに達した可能性が見込まれます。ちなみに、2016年度の年間輸入量は524トンだったので、今年は上半期だけで昨年度の年間輸入に迫る量の金輸入が行われたことになります。

 それだけGST導入前は金に対する税率の上昇に対する警戒感が強かったと言えるでしょう。

 このようにGST導入前に年間の需要をほぼ確保している業者が多いと予想されることもあり、年間を通してのインドの金輸入を考えると、下半期の金輸入量は上半期に比べて大きく落ち込む可能性があります。ただ、これは税率がどの程度引き上げられるか、不透明感の強い状況下で手当てが進んだことが背景であり、インドの金需要の落ち込みが原因ではない、という点に注意が必要でしょう。

 また、GSTの導入は確かに購入する側にとっては金価格の上昇をもたらします。この税率の上昇が注目を集める点ではありますが、忘れてはいけないのが、GSTが導入された目的はインドの経済成長を促すことにある、という点です。

 当然のことながら、徴税の方法が簡素化されたことによる経済成長への影響は短期で明確に現れるわけではありません。しかしながら、複雑な制度が簡素化されたことによってインドの経済成長が促されるようであれば、それが購買力の拡大につながり、結果的に金需要の増加につながる可能性は十分にあります。

 GSTは導入されたばかりです。また、当然のことながら、インドの経済成長のカギを握っているのはGSTだけではありません。そのため、GSTの導入が必ずしもインドの経済成長を促しこれが金需要を拡大させる、というわけではありません。

しかしながら、新たな制度が定着し、これによってよりスムーズな経済活動が可能となり、また成長が促されることが見込まれることは、金市場にとっても明るい材料と言えます。

 目先は落ち込みが見込まれるインドの金需要ですが、新たな制度によって経済成長が促され、これによって金需要の拡大が促されることを期待したいところです。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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