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予想外の在庫増加から見る原油市場のこれから

 NYMEX市場ではWTI原油先物価格が現地6月7日の取引において大幅に下落しました。この日、中心限月である7月限は前日比2.47ドル安の45.72ドルまで値を落としました。この価格水準は現地5月9日の取引以来の低い水準となります。

 WTI原油価格がこの水準まで値を落とした直接的なきっかけとなったのは、この日、発表された米国の原油在庫量が事前予測を上回り拡大となっていたことでした。

 米国エネルギー省(DOE)の発表によると、現地6月2日時点の米国の原油在庫量は前週に比べて330万バレルの増加となりました。

 これは前年同時期に比べると1,930万バレルの減少となります。前年度の水準を大幅に下回っていることで、サウジアラビアを中心としたOPEC加盟国に加え、ロシアなど主要産油国が協調減産を実施するなか、原油の需給には引き締まり傾向が窺われます。

 ただ、米国ではメモリアルデーの休日以降は、一年中で最も需要が増加するドライブシーズンを迎えます。そのため、通常ならば石油製品を生産するための原油需要が増加し、その結果としてこの時期の原油在庫は減少を維持することが見込まれます。

 今回の原油在庫の増加がサプライズとして受け止められたのは、まさにドライブシーズン入りしているにもかかわらず、これまでの傾向とは異なって在庫が拡大していたことが背景となっているのです。

 実際、ロイター社によると事前の調査では原油在庫は350万バレル減少する一方、ガソリン在庫は60万バレルの拡大、さらに石油精製品在庫は30万バレルの増加が見込まれるという、石油製品生産に向けた原油消費が活発化するなか、原油在庫が減少して石油製品在庫が拡大する、と予測が大勢を占めていました。

 それにもかかわらず、今回の発表では原油在庫が330万バレル増、ガソリン在庫は332万バレル増、さらには石油精製品在庫が436万バレルの拡大と、いずれも大幅な拡大を記録したのです。

 これが市場では予想外の弱材料として受け止められ、エネルギー価格を下押す原因となったのです。

 とはいえ、重要なのはこの在庫拡大傾向がいつまで続くのか、ということです。そのためには、6月7日付の報告においてエネルギー在庫が拡大した背景を見る必要があるでしょう。

 本報告においてエネルギー在庫が大幅に拡大した主な原因は、どこにあるのでしょうか。

 まず、需要面を見てみると、石油製品生産用としての原油需要は前週の1,751万バレルを下回るとはいえ、1,723万バレルと1,700万バレル台を維持しています。また、製油所稼働率も94.1%と今年に入ってからは3番目の水準に達しており、原油消費は大きくペースを落とすことなく続けられたと十分に考えられるでしょう。

 また、一方の供給面に関しては、産油量は前週の934万バレルとほぼ同程度の932万バレルとなっており、米国内の産油量も原油在庫を大きく押し上げる要因になったとは考えづらいのが実情です。

 ただ、産油量と並んで重要な供給源となる輸入に関してみると、前週の799万バレルから834万バレルと拡大したばかりか、米国からの輸出は前週の130万バレルに対し56万バレルへと落ち込みを見せているのです。

 つまり、需要、産油量は前週とほぼ同水準を維持しながらも、輸入量が増加すると同時に輸出量が減少したことで、米国内の原油在庫が拡大したと考えられるのです。

 このように今回の報告から確認できるのは、米国内の産油量、そして需要には大きな変化が見られたわけではなく、一時的に輸入量が拡大していたことが原油並びに石油製品在庫の水準を押し上げた、という点です。

 そのため、今後、米国の輸出入状況次第では原油在庫が減少に転じる可能性も十分にあるでしょう。

 とはいえ、この価格の低迷が一過性の動きに留まるとは必ずしも言えない状況にあります。というのも、米国では原油価格が回復傾向を見せるなか、着々とシェールオイル生産が拡大しているからです。

 米エネルギー省情報局(EIA)は12日に発表した掘削状況レポートで、米国の7月のシェールオイル生産は日量547.5万バレルと、前月から12.7万バレル増加する見通しであることを明らかにしました。

 注目されるのは、増産が見込まれる地域です。最も産油量が拡大すると見られているのがテキサス州西部のパーミヤンで、増産幅は6.5万バレルが見込まれています。

 この地域はテキサス州とニューメキシコ州にまたがる地域であり、生産コストも従来を大幅に下回ると見られています。この地域のシェールオイル生産は、この2年間で飛躍的に拡大した結果、現在の産油量は全米のシェールオイル生産量の半量を占めるに至っています。

 今後、原油価格が上昇するようであれば、このバーミヤン地域を中心としたシェールオイル産地での生産量の拡大が続くと予想されるため、協調減産が高い遵守率で実施され続けたとしても、米国内の石油需給は潤沢な状態を維持しかねません。

 これに加え、トランプ政権による戦略備蓄原油(SPR)政策も市場にとって弱気なインパクトを与えることになりそうです。というのも、現地5月23日に議会に提出されたトランプ政権による予算教書では、SPRの量を半分に縮小する方針が示されていることが明らかとなったからです。

 縮小が予定されている量は2億7,000万バレルであり、今後10年に渡って放出が続けられる予定が示されています。

 OPEC諸国並びにロシアが高い水準を維持して減産を実施し続ければ、生産面からの石油供給量は縮小した状態が続くことになります。しかしながら、価格が上昇すれば米国内ではシェールオイル増産の動きが強まるというジレンマを依然として石油市場は抱えていることに加え、新たに加わったSPR放出政策によって米国内の石油需給が大きく引き締まる可能性は低下したと言えるでしょう。

 今後、米国のエネルギー輸出入がどのように推移するか注意して見守る必要はありますが、これまでのように原油価格の重石となる材料には変化は無く上値を抑制され続ける可能性には大きな変化がないように思われます。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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