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サウジアラビアとカタールの国交断絶が石油市場に与える影響とは

 現地6月5日、世界最大の産油国であるサウジアラビアがカタールとの国交断絶を発表しました。これを受け、バーレーン、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)、イエメン、モルディブ、リビア東部勢力など、計8か国もカタールとの国交断絶を発表するという、中東情勢に対する警戒感を一気に高める報が伝えられました。

 この国交断絶を表明した国々では、カタール籍の航空機や船舶が自国の領空や領海への進入を禁止したほか、これらの国に滞在しているカタール人に対しては国外退去が命じられるなどの措置が取られています。

 唐突にも感じられる今回の国交断絶ですが、その背景となっているのが、スンニ派とシーア派の対立です。

 サウジアラビアはスンニ派国家であり、これまでもスンニ派同盟を形成するなどしてシーア派国家であるイランに対抗する措置をとったり、その影響を抑制するための政策を実施してきました。

 その一方でカタールはスンニ派国家でありながら、イランとは経済的に強いつながりを持っています。これには、カタールはペルシャ湾に面する位置にあり、サウジアラビアが対立を深めているイランとは海を跨いだ隣国になるという位置的な背景が関係しています。

 特にペルシャ湾上にまたがる世界最大規模とされる天然ガス油田をイラン側をサウス、カタール側をノースとして共同開発を進めています。

 イスラム教における聖地が自国内に位置することもあり、スンニ派の盟主とされるサウジアラビアにとって、シーア派であるイランとカタールとの関係の深まりは警戒すべきものであったと考えられます。

 特に、主要産油国である以上に主要な天然ガス産出国であり、確認埋蔵量は世界第3位を誇るカタールが、豊富な資金を背景として独自の外交政策をすすめつつあること、また、イスラム教過激派を支援しているとささやかれていることが、サウジアラビアを刺激したと見られます。

 それでは、もともと長年に渡る確執を抱えるサウジアラビアとイランの関係を背景にしたカタールとの国交断絶に今となったのでしょうか。

 これは、米国でのトランプ政権の誕生と、そしてトランプ政権下のもとで進行する米国とサウジアラビア、そして、ロシアとサウジアラビアの接近が背景になっていると思われます。

 まず、サウジアラビアと米国の接近に関しては、米国内の公共事業への出資先を模索するトランプ大統領がサウジアラビアの潤沢な資金を拠り所とし、その一方でイラン包囲網を呼びかけたことで、アラブ諸国内でイラン外しの動きが高まった、という流れがあります。今回のカタールとの国交断絶も、イランとの関係性の深い国に対する見せしめ的な措置と考えられます。

 また、原油価格の安定を求める動きのなかで、イランと良好な関係を持つロシアとサウジアラビアが協調減産を現実のものとさせたことは、サウジアラビアにとって石油価格安定以上の外交的な意味を持つのではないでしょうか。

 今回のカタールとの国交断絶という強気な動きは、米国、ロシアという大国との関係を強めたことで実行に移し得たもので、イラン包囲網を着々と築き上げていくサウジアラビアの本気度が示されたものと言えるでしょう。

【カタールとの国交断絶の影響】
 それではこのカタールとの国交断絶は石油市場にとってどのような影響を持ち得るのでしょうか。

 まず考えられるのが、中東からのエネルギー供給不安定化に対する警戒感の強まりです。

 前述のようにカタールはペルシア湾側に位置しています。その向かい側にはサウジアラビアにより敵対視されているイランが位置しているため、今回の国交断絶いによりペルシア湾の航行への障害が発生する可能性が高まることが警戒されます。

 特にカタールは日本にとっても重要なエネルギー輸入相手先国だけに、同国からのエネルギー輸出が滞ることがあれば、日本のエネルギー供給にも大きな影響をもたらすことが予想されます。

 実際、現地5日のNYエネルギー市場においても国交断絶の報が伝えられた後にWTI原油が上昇する場面が見られました。しかしながら、その強い足取りは一時的なものにとどまっており、この日の中心限月である7月限の終値は前日比26セント安の47.40ドルにとどまっています。

 エネルギー供給に支障が出る可能性があるにもかかわらず、その可能性に対する市場の反応は限られたものにとどまっているわけです。

 その理由として考えられるのが、まずカタールからのエネルギー供給が不安定化してもそれを補い得るだけエネルギー供給は潤沢、との見方です。

【中東情勢の不安は協調減産の足並みを乱す不安】
 現在、サウジアラビアとロシアという2大産油国を中心にした産油国は、石油価格を安定化させるために協調減産を実施し、その実施期間の延長も決定しています。

 しかしながら、その一方で懸念されているのが、協調減産の影響で石油価格が上昇すれば、結果として生産コストが高いシェールオイルの増産を促す可能性です。

 現在の石油需給はこのジレンマに陥っており、カタールとの国交断絶がエネルギー価格を押し上げたとしても、これはシェールオイル生産再開のきっかけとなりそうで、結果的には世界の石油需給は潤沢な状態が保たれることが予想されるのです。

 また、中東情勢の不安定化は協調減産を実施している中東諸国の足並みを乱す結果ももたらす不安があります。協調減産の効果は、産油国が足並みを揃えて減産をすることで始めて期待できます。

 それにもかかわらず、国交断絶という強気な政策が実施されたことは、せっかくの協調減産による効果を後退させかねず、結果として石油需給は潤沢な状態へと後戻りさせられる可能性も想定されるのです。

 さらに、サウジアラビアとイランとの確執は今に始まったものではなく、市場においてはすでに十分に認識された材料であることも、市場の反応が限られた一因と考えられます。

 今後、事態がどのような方向に進んでいくのかを十分に見守る必要はあるでしょう。しかしながら、中東諸国からの石油供給が大幅に減少し、シェールオイルが増産されても需給の引き締まりが警戒されるほどの政情不安が見込まれる状態に陥らない限り、エネルギ―供給引き締まりに対する警戒感は一時的なものにとどまると予想されます。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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