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地政学リスクに押し上げられる金価格の行方を考える


 NY金市場では、現地3月27日以降、1,260ドルを上値抵抗にしての高もみが続いていましたが、現地4月7日の取引では一時的とはいえ1,273.30ドルと1,270ドルを突破する場面が見られました。

 その後は上値を抑制される足取りを見せながらも、現地4月11日の取引では上値追い場面を演じ、中心限月の6月限は1、274.20ドルでこの日の取引を終えました。12日は1289.00ドルまで一段と上値を伸ばし、同限月としては、昨年11月10日以来の高値をつけました。

 およそ5か月ぶりの水準に達したことになりますが、この水準まで金価格が押し上げられているのは、周知のように、地政学リスクの高まりが背景となっています。

 地政学リスクに対する警戒感は、昨年6月の英国でのEU離脱派勝利に続き、米国では米国第一主義をかかえるトランプ新政権が誕生するなど、排他主義的な動きに予想以上の広がりが見られたことをきっかけにして高まりました。

 さらに、今年は欧州の重要な選挙イヤーとなるなか、極右政党の台頭が見られたことが、不測の事態に対する警戒感を根強いものとしていたのです。

 そこに、今月3日に発生したロシアでの地下鉄テロ事件、これに続いて7日には米国によるシリアへの空爆、といった一連の流れが生じました。欧米諸国における排他的な動きに加え、米国新政権が直接的な攻撃をシリアに対して行ったことで、地政学不安は一気に広がりを見せているのです。

 このような地政学不安は、安全な投資先としての金の需要を直接的に刺激することに加え、ドルを回避する動きがドル安を生み、結果としてドル建てで取引される金の割安感を強めるという間接的な点からも金価格を押し上げる要因になってきます。

 実際、金市場では地政学不安の高まりが、安全な投資先としての金需要をジリジリと押し上げている様子が窺われます。

 世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドの残高は、米国によるシリア空爆が行われた直後の現地4月7日時点では836.49トンと前日と同量を記録したほか、週明けの10日も838.26トンと、わずか1.77トンの伸びを見せ
るにとどまりました。

 しかしながら、現地11日には842.41トンと4.15トンの増加を記録しています。地政学リスクが一過性の動きに終わる可能性を考慮しながらも、地政学リスクに対する警戒感が、ジリジリと残高の拡大を促している動きが見られているのです。

 これは、シリアに続き北朝鮮情勢に対しても市場の関心が高まっている点が、その理由として挙げられます。

 北朝鮮に関しては、現地6日に米ジョンズ・ホプキンス大高等国際問題研究大学院の米韓研究所が核活動の可能性について言及したことに続き、朝鮮半島近海へ移動している米国の原子力空母「カールビンソン」と海上自衛隊の艦艇が共同訓練に向けて調整をしていることが明らかになったほか、日本政府が韓国への渡航について注意を喚起したことにより、北朝鮮を巡る情勢に対する警戒感が一気に高まりを見せています。
 金市場では米国の追加利上げに対する警戒感が、金価格の上値を抑制する要因となってきました。これに加え、現地4月5日に公開された連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録において、連邦準備制度理事会(FRB)のバランスシート縮小を求める声が高まっていることが明らかになったことにより、ドル高が促されたことも、金市場にとっての重石となっています。

 地政学リスクが一時的なものにとどまるようであれば、改めて米国における追加利上げの可能性や、バランスシート縮小問題に対する関心の高まりが、金価格を圧迫する要因として強く意識されることになるでしょう。

 しかしながら、ジリジリと増加傾向を見せる金ETF残高の動きが示すように、地政学リスクに対する市場の意識も次第に強まりを見せています。

さらに、現地7日に発表された米雇用統計において、非農業部門の雇用者増加数が予想を大きく下回るなど、米国の雇用情勢に対する懸念も広がりを見せています。今後もこれまで想定していた通りの雇用拡大の動きが見られないようであれば、米国の金融政策には修正を迫られる可能性も浮上してきました。

今後、事態がどのように変化するか、見通しには不透明感が強いのが実情です。しかしながら、これほどまでに地政学リスクが強く意識される状況は金価格がいつ上値波乱を演じてもおかしくない可能性が高まっていることを示唆しています。さらに、米国の雇用情勢の変化は、金市場にとっての重石である米国の追加利上げの可能性にも影響を与え得るため、地政学リスクに合わせて米国内の経済指標にも十分な留意が必要になってきたと思われます。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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