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高止まりが続くも原油価格が伸びきれない理由とは

 NY原油は昨年12月上旬に50ドル台を回復しましたが、その後は、50ドル~54ドルのレンジ内での往来にとどまっています。

 54ドルの壁を2カ月以上に渡って突破できずに推移していることになります。その理由として考えられるのが、依然として根強い供給過剰懸念です。

 米国でのシェール革命以降、同国の石油生産量が大幅に増加した結果、世界的な石油供給に過剰感が強まり、これが価格を下押したのは周知の通りです。シェールオイル革命による石油在庫量への影響は、2015年から顕著となり、2016年に米国内の原油在庫は初めて5億ブッシェルを突破しました。

 しかしながら、在庫拡大の流れは今だに衰えておらず、米国エネルギー省の現地2月8日付の発表によると、2月3日時点の米国の原油在庫量は、前週時点の4億9.480万バレル、そして昨年同時期の5億0,200万バレルに対し5億0,860万バレルに拡大しています。

 このように積み上がる石油在庫が価格の圧迫要因となるなか、産油国側も価格回復に向けた動きを見せ、昨年11月末には石油輸出国機構(OPEC)総会にて減産が合意に至りました。

 産油国の動きはこれだけではありません。OPEC減産合意というこの流れを受け、12月10日にはロシアなどの非加盟の主要産油国とOPECとの間で15年ぶりの協調減産合意に至っています。

 なお、減産が合意に至ったことが評価される一方で懸念されたのが、この減産合意の遵守率です。減産が合意に至ったしても、減産が順守されなければ結局のところ、供給が引き締まることは無いため、産油国の本気の度合いを試す上でも、今年1月1日からの実施とされたこの減産合意下での産油量が注目されているのです。

 その注目の1月の産油量ですが、国際エネルギー機関(IEA)が現地2月10日に発表したところによると、1月の1日当たりの産油量は、前月に比べて150万バレル減少した日量9,640万バレルとなっています。

 そのうち、OPEC減産分は100万バレル、そしてOPECの減産合意遵守率は90%と、高い水準が示されています。

 また、続く13日に発表されたOPECの2月の月報では、1月の産油量(日量)は前月比で89万200バレル減少した日量3,213万9,000バレルでした。これは、昨年11月末の総会において決定された産油目標量の上限である3,250万バレルを下回るものです。

 ちなみに、OPECの減産分のうち、サウジアラビアの産油量は49万6,200ブッシェルの減産とされているほか、イラクが16万5,700バレル、アラブ首長国連邦(UAE)が15万9,300バレルの減産を実施したと伝えられています。

 このような主要産油国小積極的な減産の結果、OPECの減産遵守率は90%以上と高い水準に達していることが見込まれます。

 また、IEAでは、減産遵守率が現在の高い水準を維持できるようであれば、需要拡大を含めたうえで、6ヵ月で1日当たり60万バレルの在庫削減が可能、との見解を示しています。

 OPECならびにロシアなどの主要産油国による協調減産を受けて、石油在庫縮小に向けた本格的な足取りが、IEA報告において示されたことになります。

 しかしながら、市場の反応は薄く依然としてNY原油は54ドル前後を上値抵抗にしての推移が続いているのです。その理由として挙げられるのが、まず、在庫が1日当たり60万バレルというペースで縮小すること自体は強気材料とはいえ、現在の在庫水準が過去最大規模であることを考慮すると、需給にひっ迫感が強まる程度まで在庫が縮小するには、かなりの時間を要する可能性がある、という点です。

 前述のように、DOE発表の原油在庫量は2月3日時点で5億800万バレルと過去最大規模に膨らんでいます。シェールオイル革命以前となる2014年の原油在庫は最大でも4億バレル程度だったため、在庫が引き締まり供給過剰に対する警戒感が後退するためには、あと1億バレルの在庫縮小が必要となってくるのです。

 IEAが予測するように、1日当たり60万バレル程度、在庫が減少したとしても、この1億ドルの在庫縮小が実現されるためには、166日程度が必要となります。半年弱にも渡って、継続的に産油削減が実施されなければ、供給過剰が懸念される以前まで在庫が引き締まることは無い、という条件は、石油市場においては実現のハードルが高い条件のように思われます。

 というのも、OPEC並びに非OPEC加盟国の主要産油国による減産が在庫の縮小を促した結果、原油価格が回復したとしても、その場合にはシェールオイルの生産が再開される可能性が高まるからです。

 シェールオイルの損益分岐点は、その生産地によって大きな差があると考えられますが、世界最大の油田サービス企業であるシュルンベルジュ社によると、2013年時点における平均の損益分岐点は58ドル前後と考えられます。

 それだけに、OPECそして非OPEC加盟国が減産を実施して価格が上昇しても58ドル前後に達すればシェールオイルの増産が見込まれることになり、OPEC、そして非OPEC加盟国による減産が相殺されるリスクがある、と見られるのです。

 実際、原油価格の高止まりが続くなか、米国の石油リグ稼働数は2017年2月11日公表時点で591基と、2015年10月23日以来の水準まで回復して居ることが明らかとなりました。

 さらに危惧されるのが、米国のリグ数は1,500基を上回るため、価格次第ではリグ稼働数はまだまだ伸びしろがあるという点です。

 1月の減産遵守率が90%に達していたことは、OPECそして非OPEC加盟国の本気度合いが如何に高いかを窺わせています。しかしながら、減産が実施されたとしても、これが米国のシェールオイル生産を活発化させる可能性が否定される、もしくは明らかな石油在庫の減少を促さない限り、NY原油価格が54ドルの上値抵抗を突破するほどの勢いには乏しい状況が続くと思われます。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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