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上昇基調の今だからこそ確認しておきたい金市場の需給状況

 1月に入ってからトランプ政権誕生後に下値を追う足取りを見せていたNY金が再び地合いを強めています。現地31日における中心限月4月限の終値は前日比15.4ドル高の1,211.4ドル。

 トランプ政権誕生に伴って後退していた懸念が、同大統領によるメキシコとの国境の壁建設問題とこれを受けた米墨間の首脳会談の中止、これに続く入国制限とこれを批判する高官の解任、を受けて高まったことが背景となっています。

 新大統領が誕生した1月20日から1週間を経た現地1月27日にNY金は1,188.4ドルまで値を落としていました。その後のわずか2営業日で23ドルの上げ幅を記録して1,200ドル台に回復してきたわけです。

 これも、新政権が米国と諸外国間における亀裂の深まりを懸念させる政策を次々と発表していることが背景となっています。世界に広がるトランプ新政権に対する批判の声が高まると同時に、金市場にはリスク回避のための買いが戻ってきていると考えられるのです。

 このようなトランプ政権に対する警戒感を背景としたリスク回避の動きは、株式市場においても顕著に見られます。株式市場では、ダウ工業株30種平均、ナスダック、S&Pのそれぞれが、同大統領の減税や規制緩和を始めとする経済政策に対する期待感が強まるなか、1月下旬には連日最高値を更新していました。

 しかしながら、現在、株式市場で支配的なのは、同大統領による保護主義とこれによる世界経済への悪影響に対する警戒感であり、これを受けてダウ平均は続落場面を演じています。

 トランプ政権が今後、どのような政策を打ち出し、そして米国外の国々とどのような形の外交関係を築くのかに対する不安感の高まりは、しばらくの間、金市場にとっては買い支援材料になってくる可能性が高まっています。

 しかしながらトランプリスクを背景とした逃避買いの動きが金市場にとっては買い支援材料になり得ると見られながらも、これに水を差しかねない報告も浮上しています。それは、金の需給状況です。

 2016年第4四半期における金需給の調査レポートが、トムソン・ロイター GFMS社によって1月26日に発表されました。この報告は、世界的な金の需給状況を知る手掛かりとして重要視されている報告です。

 今回の報告において2016年の金需給は、2005年以来、初めてとなる供給過剰に陥っていたことが明らかにされました。GFMSによると、第4半期における現物の金供給量は1,102トンだったのに対し、現物需要は1,011トンにとどまっています。つまり91トンの現物供給過剰に陥っていたことになります。

 また、2016年全体の現物需給状況については、第1四半期は352トン、第2四半期は364トン、第3四半期は369トンの供給過剰に陥っていました。

 これに在庫部門を加えた場合の需給は、第1四半期が2トン、第2四半期が55トン、第3四半期が215トンとなりますが、第4四半期においては297トンの供給過剰と年末に向かうにつれ、供給過剰幅が拡大しています。

 昨年は6月23日には英国でEU離脱を巡る国民投票が行われた結果、EU離脱派が勝利したほか、11月8日には米国で大統領選の投票が行われて事前予想を覆しトランプ氏が大統領選に勝利する、といった国際情勢に大きな影響を与えるイベントがありました。
 
 それにもかかわらず、供給過剰幅が次第に拡大しているのは、金の安全な投資先としての役割に対する需要がそれほどまでに後退していた、と考えられるのです。

 このように金の投資用需要の後退を促していた主因となるのが、米国での追加利上げの動きでしょう。というのも、追加利上げは、将来的に金価格の上値を抑制する要因になる考えられるからです。

 その理由というのは、追加利上げが実施されれば、将来的に金利を産む資産に対する需要が高まる一方、金利を産まない金に対する需要は後退すると考えられるうえ、追加利上げが米国のペーパーアセットの価値を高める結果、国際的にはドル建てで取引される金は割高感が強まると予想されること、などが挙げられます。

 投資というのは将来的に利益が生まれると予想される場合に行われるものであり、将来的に利益が発生しないどころか、価値が下がると予想されるものに対しての投資は控えられるのは当然のことでしょう。

 今回発表された金の需給報告は、追加利上げが背景となって金の投資対象としての価値が低下している状況を浮き彫りにしたと言えるでしょう。

 トランプ政権に対する不安の高まりは、安全な投資先としての金需要を高めています。しかしながら、米国では2017年内に3回の追加利上げが予定されるなど、米国の金融政策自体に変化が見られているわけではありません。

 トランプリスクを背景とした買いは金価格を支える要因になると考えられますが、金ETF残高の安定的かつ継続的な増加が確認出来るなど、投資用需要としての高まりが伴わないようであれば、金市場の強い足取りにも限界があると思われます。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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