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高止まりが続くWTI原油価格のこれからを考える

NY市場ではWTI原油が50ドル以上という水準を維持し続けています。WTI原油は約1年前には30ドル割れまで値を落としていました。そのWTI原油価格を現在、支えているのは、OPECそして非OPEC加盟国による協調減産が決定されたというサプライズと、協調減産が開始された今年1月1日から現在に至るまで、減産の高い順守率が背景となっています。

現地1月22日には、昨年12月10日に協調減産が合意に至った後、初めてとなるOPEC加盟国とOPEC非加盟国による減産監視委員会(JMMC)の会合が開催されました。

ウィーンで開催されたこの会合では、予定減産量の180万バレルのうち150万バレルの減産がすでに実施されていることが確認されました。そればかりではなく、今後も減産は順調に進められ、今年半ばには3億バレルの在庫が減少するとの見方をサウジアラビアのファリア・エネルギー産業鉱物資源相が示しています。

半年、つまり約182日で3億バレルの在庫が減少するということは、単純に計算すれば1日当たり165万バレル前後の減産が実施されると同相が見ていることが、この発言から窺われます。

なお、OPEC加盟国内で最大の産油量を誇る、サウジアラビアのファリア・エネルギー産業鉱物資源相は、同国の産油量について"現時点で日量1,000万バレルを僅かながら下回る水準にある"ことを明らかにしたほか、2月も追加減産を実施する予定であることを明らかにしています。

さらに、OPEC非加盟国中、最大の産油国で非OPEC加盟国内の中心的な存在であるロシアに関しては、ノバク・エネルギー相が1月の減産量は約10万バレルで当初の予定の2倍に達しているほか、1月中の平均産油量が1,115万バレルに留まる、との見通しを示しています。

このような2大産油国を中心にした積極的な減産遵守が原油市場では買い支援材料となり、原油価格が底固さを見せているのです。

ただ、原油価格が底固さを見せる動きを演じるなかで高まっているのが、価格の上昇を背景としたシェールオイル生産量が再び拡大するのではないか、という警戒感です。

そもそも、原油価格が長期低迷を強いられたのは、シェール革命によって米国の産油量が飛躍的に増加し、これを受けて世界的な石油供給過剰感の強まりが背景となっていました。

今回、OPEC加盟国と非加盟国が強調減産の合意に至ったのも、協調減産を実施することで世界的に石油需給が引き締まり、その結果としての原油価格の回復が期待されるからです。

それにもかかわらず、価格が上昇したところでシェールオイル産油量が回復するようであれば、産油国の努力も水の泡に帰すことになります。そのため、価格の上昇がシェールオイル生産に与える影響に対し、市場の関心が高まるのも当然のことと言えます。

このような中、現地1月20日に米国のベーカー・ヒューズ社が米国内の石油リグ稼働数が大幅に増加したことを明らかにしました。同社によると、1月20日時点の北米の油井リグ稼働数は前週に比べると29基増加した551基に達しています。

価格上昇によるシェールオイル生産量の回復が懸念されるNY原油市場では、このリグ稼働数の大幅な増加は、価格上昇によるシェールオイル増産という懸念に結び付けられ、現地23日のWTI原油価格は反落場面を演じています。

しかしながら、2014年度には油井リグ稼働数が1,500基を上回っていたことを振り返ってみると、前週比では大幅な増加を見せたとはいえ、551基という現在の稼働数が生産量に大きく影響を与えるほどの水準ではないと考えられます。

また、実際、米エネルギー情報局(EIA)が1月17日付で発表したDriling Productivity Reportにおいて、2月のシェールオイル生産量が前月比で増加すると見込まれるのは、米国の代表的な生産エリアであるBakken(バッケン),Eagle Ford(イーグルフォード),Permian(パーミアン)のうちパーミアンのみで、その増加分も5万3,000バレルに留まると見られていることが明らかとなりました。

また、米国全体でも2月の増産幅は前月比で4万1,000バレルに留まる見通しとされています。つまり、原油価格の上昇がシェールオイルの増産に影響を与えているとしても、OPEC加盟国、そしてOPEC非加盟国の減産幅には及ばないことが分かります。

シェールオイルの産油コストについては、国際エネルギー機関(IEA)の発表で40~110ドルが想定されることが明らかになっています。つまり、採掘地によってかなりのバラ付きがあると予想されるため、現在の価格水準ではシェールオイル生産量が回復する地域は限られており、シェールオイル生産量の大幅な回復につながる可能性は低いと考えられます。

OPEC、OPEC非加盟国による協調減産によって、世界の需給が引き締まれば原油価格がさらに回復することが予想され、そうなればシェールオイル生産量も順調な回復を見せるでしょう。

ただここで懸念されるのが、シェールオイル生産量の大幅な回復を促す程度にまで、OPEC加盟国、そしてOPEC非加盟国が減産を遵守できるかどうか、という点でしょう。

次回は3月に予定されている減産監視委員会においてどのような報告が行われるか、が注目されるところです。

なお、米国ではトランプ大統領が、キーストーンXLパイプライン建設計画を進める大統領令に署名した、と伝えられています。

同パイプラインが建設されれば、米国のカナダ産輸入量の拡大が実現されることになります。そうなれば、米国は中東諸国からの原油輸入量が減少してもカナダからその減少分を輸入することで供給を確保できることになるため、中東諸国の産油状況が米国の石油需給に与える影響も低下すると考えられます。

パイプライン建設には時間を要するため、カナダからの石油輸入量が実際に拡大するのはまだ先のことと考えられます。しかしながら、米国の石油供給における中東諸国への依存度低下は今後もさらに進むと予測されることは、米国が安定した石油供給先を確保する可能性が高いことを意味しています。

さらに、米国では共和党が米国第一主義を打ち出すなかで輸出を免税にする一方で輸入関税を引き上げる措置となる国境税調整を検討しています。

現時点では高いOPECそしてOPEC非加盟国の減産順守率に支えられている原油価格ですが、トランプ政権の打ち出す政策次第では大きく高下する可能性がある点には引き続き注意が必要です。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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