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産油量減少合意に至るもくすぶる懸念

現地11月30日、石油輸出国機構(OPEC)はウィーンで開催した総会において、2008年以降、初めてとなる減産で最終合意に至りました。

この減産最終合意により、OPECの産油量(1日当たり)は、日量約120万バレル引き下げることにより9月のアルジェ会合における下限となる3,250万バレルで決定されています。

また、減産で合意に至ったのはOPECだけでなく、主要産油国であるロシアを含めた非OPEC加盟国も60万バレルの減産を実施することで、供給削減量180万バレルを達成することが目的とされています。

なお、この減産が実行に移されるのは2017年以降であり、当初の協調減産期間は6か月、それ以降は市場の動向を見たうえで更なる6か月の減産延長を実施するかどうかを決定することになっています。

シェール革命によって米国の産油量が大幅に増加し、これに伴い石油供給に過剰感が強まって以降、原油価格は低迷を強いられてきました。NY市場では今年1月半ばから2月上旬にかけてWTI原油先物が30ドルを割り込む場面も見られていたほどです。

また、2015年7月下旬以降、WTI原油先物価格は50ドルを上値抵抗にしての推移が続くなど、上値を抑制されるなかでの推移が続いています。

この原油価格の低迷を打破するためには、過剰となっている原油供給を削減することによって原油需給を引き締めるのが有効な手段、として、OPECに対する減産期待が高まると同時に、OPECも減産に向けての話し合いを行ってきました。

しかしながら、経済制裁をとかれたばかりのイランにとって石油産業は経済立て直しのために必要であるため、減産には強く反対する一方、サウジアラビアがイランに対して減産を強く求めるなど、イランとサウジアラビアの対立の激化が、壁となって立ちはだかり、幾度も会合が開かれたにもかかわらず、減産合意に至ることがありませんでした。

そのため、今回の総会においてロシアという非OPEC加盟国の主要生産国も協力したうえでの減産合意は、市場ではサプライズと捉えられ、NY市場では原油価格が大きく上昇しています。

現地11月30日の取引は45.24ドルで開始しましたが、49.44ドルの終値を付けるなど、50ドルを目前に迫る水準まで値を引き上げて終えています。その後も減産合意が買いを集めるなか続伸場面を演じ、現地12月5日の取引では51.79ドルと10月20日の取引以来、初めて50ドルを超えて終了しました。

しかしながら、原油市場にとって買い支援材料となったこの減産合意ですが、注意しておきたい点が残されています。

まず挙げられるのが、今回の減産合意はナイジェリアとリビアへの適用が除外されている点でしょう。ナイジェリアとリビアに関しては、政情不安が原因で産油量が落ち込んでいることが、生産調整合意の適用除外の理由です。

しかしながら、10月、11月と連続してOPECの産油量の増加が、複数メディアの調査によって伝えられており、その一因となっているのがリビアの増産です。

同国の産油量(日量)は、かつて160万バレルを誇っていました。しかしながら、2011年に勃発した内戦の影響で産油量が大幅に減少した結果、産油量(日量)は2014年度は47万バレル前後、2015年度は41万バレルと低迷し続けていると見られています。

しかしながら、以前の産油量から見ると、混乱が落ち着くにつれて産油量は大幅に回復する可能性が高いのが実情であるなか、産油調整の適用を外れたことで、今後も増産を続けていくことが見込まれます。


また、ナイジェリアに関しても、地政学的問題から現在の産油量が落ち込んでいるとはいえ、地政学問題が払しょくされれば産油量がすぐに回復することが見込まれます。ちなみに、ナイジェリアの産油量は地政学的問題から日量50万バレル程度、落ち込んでいると見られますが、これは今後、50万バレル程度の増産が可能であることを意味しています。

実際、複数メディアの調査によって、11月のOPEC産油量は過去最高の日量3,416万バレルに達したことが伝えられましたが、ナイジェリア、リビアの産油量がそれぞれ日量14万バレル増加したことが主因、とされています。

両国合わせて日量28万バレルの増産となったことが明らかになったわけですが、今後も両国が積極的な石油生産を続けた場合、OPECが合意に至った120万バレルの減産幅も、この2か国の増産によって大幅に相殺される可能性もあるのです。

さらに警戒されるのが、実際に割り当てられた生産調整枠をそれぞれの産油国が順守するかどうか、という点です。

OPECは原油価格をどうにか回復させたい、という要望を抱きつつも、産油量を引き下げることは世界の石油生産において自らのシェアを失うことにつながる、との葛藤を同時に抱えています。

特に、原油価格が上昇すれば生産コスト割れを、価格低迷が原因で減少していた米国の産油量も回復することが見込まれます。そうなれば、OPECの目指す需給引き締まりを受けた価格の回復、という流れの実現は難しくなります。

今回の減産最終合意は市場にとっては予想外のサプライズとなり、久しぶりに石油産業におけるOPECの存在を意識づける効果をもたらしました。しかしながら、産油の減産合意に至ったことが需給の引き締まりと価格の安定的な回復を必ずしも約束するものではありません。依然として原油市場は価格低迷を促す材料を抱えた状況であることに変わりはないと考えられます。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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