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混迷の米国大統領選が金市場の与えた影響

 現地11月8日に投開票が行われた米大統領選は、接戦の末、ドナルド・トランプ氏が当選しました。現地10月28日にはメール問題が再燃したことで支持率が低下したと伝えられながらも、事前にはクリントン氏優勢と見られていたため、今回の選挙の結果は大番狂わせと言えるでしょう。

 実際、トランプ氏の優勢が伝えられるに伴って金融市場は乱高下を余儀なくされました。為替面の推移から市場の動揺を見てみましょう。ドル・円の場合、クリントン氏優位と見られていた投票開始間もない時点では、105円台まで円安が進んでいました。

 しかしながら、その後、トランプ氏が得票数を伸ばすに従ってトランプリスクに対する警戒感が強まり、ドルを売って円を買う動きが活発化し、一時、1ドル/101.19円まで円高が進行したのです。

 開票が進み、トランプ氏が当確を得る時点では、金融市場には幾分の落ち着きが見られています。11月9日17時現在(東京)のドル・円はこの日のドル円の最安値、最高値からはいずれも2円近い値開きがある103.34円であり、これが如何に振幅の激しい動きをドル・円が演じたかを示しています。

 トランプリスクを受けて乱高下したのは為替面だけではありません。11月9日の日経平均株価は一時、1万6,111.81円まで値を下げた後、前日より919.84円安の1万6,251.54円で取引を終えました。やはり、リスクを避けるために、資金が流出したことが大幅安の背景となっています。

 このようなトランプリスクにより生じた動揺は、金市場でも見られています。NY市場の時間外取引では前日比で60ドル高に迫る場面が見られました。NYの時間外取引中となる日本時間の午前11時現在、NY金12月限は前日比6.60ドル高の1,280.10ドルでした。

トランプ氏優位との見方が強まるにつれ、同63.80ドル高の1,338.30ドルに達したのです。短い間でパニックとも言える買いが如何に活発化していたかが窺われます。

ただ、為替、金市場ともにトランプ氏の当確が明らかになって以降は比較的落ち着いた足取りを見せており、開票が進むに従ってトランプ氏優位の情勢が確定的となるなかで、同氏の大統領選勝利を織り込んだものと見受けられます。

 しかしながら、トランプ氏が勝利したとはいえ、かなりの接戦だったこと、そして予想を覆して同氏が大統領に選ばれたことは、今後の金市場にも長い間に渡って影響を与えることになりそうです。

 その理由として、まず、トランプ氏が今後、どのような政策を実施していくのか、見通しに不透明感が強い点が挙げられるでしょう。同氏はこれまでのところ、米国経済に関しては保護政策主義的な視点からの発言を行っています。しかしながら、それがどの程度までの保護になるのか、そしてそれが実現されるのか、不明確な点が多く、これが市場のリスク回避の動きを刺激する要因になってきそうです。

 また、保護政策の程度によっては米国の孤立化が進む一方、米国内では白人層とマイノリティー層での分断がよりいっそう進行する可能性もあります。

 また、過激な発言などにより品格を疑問視する声も強く、今後は米大統領として相応しい態度を見せることができるかどうか、という点も注目されるところです。これまでの過激な発言は、トランプ氏の人柄に対する不信感を強めているのも事実でしょう。

 今後、同氏の発言や対応に米大統領として相応しい方向への変化が見られないようであれば、同氏を大統領に選んだ米国そのものへの不信感が強まりかねません。そうなれば政策面を含めた米国リスクが高まることになり、これが市場の懸念を高める可能性も出てくるのではないでしょうか。

 なお、同氏はこれまでに強いドル政策に対して否定的な見解を示しています。そのため、今後、同氏がドル安政策に関する言及を行った場合にはドルが売られる傾向が強まることが見込まれます。
 
 これは、国際市場においてドル建てで取引される金にとって割安感を強める一因となり、その結果として金市場にとっての買い支援材料になると考えられます。

 トランプ大統領の出現は、今後の政策の不透明さに対する懸念を高め、安全な投資先としての金需要を一気に高めました。しかしながら、トランプ大統領による政治が始まるのはこれからのことであり、同氏が大統領に就任している間は、その発言や対応の変化が見られない限り、何が起こるかわからない、という懸念がくすぶることが予測されます。

 金市場では、追加利上げの可能性という圧迫要因は依然として存在しています。大統領選を終えたことで市場が落ち着きを取り戻せば、年内の追加利上げの可能性が意識されることになるでしょう。

 なお、投開票直後の現地9日の取引で中心限月の12月限は前日比1ドル安の1,273.5ドルで取引を終えるなど、市場ではトランプショックを織り込んだ感があります。

 しかしながら、トランプ氏の勝利により金融市場は今後4年間にかけて漠然とした不安感を抱えることになったという点は変わりはありません。

 トランプリスクに大きく振り回された金融市場。今後、同氏がどのような政策を実施し、また、同氏の発言や対応にどのような変化が見られるのか、または、見られないのか。金市場にとって、いつ逃避買い需要が活発化してもおかしくはない潜在的な不安要素が植え付けられたといえ、それだけにこれからの同氏の一挙手一投足が注目されるところです。

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平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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