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注意が必要な石油の供給動向

 今週に入ってからダウ平均は大幅反発場面を演じています。ヘッジファンドの換金売りも一巡したとの見方が強まるなかで発表された米国の新築住宅販売戸数が予想を上回る46.4万軒となったことが上昇のきっかけになったと思われます。

 また、このような株式市場の足取りは需要低迷観測を和らげたため、値ごろ感の強まっていたコモディティ市場でも生活必需品である食料、産業用貴金属を中心にして28日、29日と強い足取りを見せました。

 しかしながら、今年上半期にはコモディティ価格全般を押し上げる役割を果たした原油価格は下げ止まりの様相を見せながらも60ドル台前半での推移にとどまっています。前週末のOPECによる150万バレルの減産決定、そして株式市場の底打ちの伴う金融危機に対する不安感の緩和という、従来なら強気となる材料に対しても大きな反応は見られていません。

 その理由としては、これまでの価格下落で需要減退観測を織り込んでいるものの需要の回復見通しがつかないこと、米国の景気低迷観測を受けドルの先安感が根強いこと、そして現在の原油市場では積極的に買い進む参加者が乏しいこと、が挙げられるでしょう。

 需要に関しては、産油量(日)が8月1日に今年最大となる517万2,000バレルに達した後は減少傾向を強め、10月17日時点の産油量は前年同時期を7.8%下回っているにもかかわらず、原油在庫量は2億9,686万バレルから3億1,183万バレルに達しています。一方、この間の平均原油輸入量(日)は過去5年間で最も少ない956.4万バレル前後にとどまっていることが需要が低迷した状況にあることを示唆しています。

 一方、同様に落ち込みを見せているのが取引の規模です。CFTC(全米先物取引委員会)の発表によると、10月21日時点におけるNY原油市場の規模を示す取組高は103万5,697枚。これは2006年7月18日以来、最も少ない規模で、141万3,956枚を記録した年初に比べると22.8%の減少となります。

 これは、リーマンショック以降、10月2日にはスイス金融大手のUBSがエネルギー部門の閉鎖を発表したほか、10月22日にはメリル・リンチがシンガポールのエネルギー取引部門を縮小したとダウジョーンズが伝えるなど、金融危機を契機にして大規模な資金を保有する投資家がエネルギー部門から流出していることが背景になっていると考えられます。

 もちろん、規模が縮小したとはいえ依然として100万枚以上、バレルに換算すると10億バレル以上の規模の取引が続けられているため、NY原油市場の投資資金が枯渇してしまったわけではありません。

 また、市場規模が縮小しているためボラティリティ(価格変動率)が高まる可能性を強めていますが、将来的に需要が増加するとの見通しが無ければ大規模な投資資金を呼び込むことは難しい、という状況を考慮すると今年上半期に見られたような中期に渡る上昇基調を予測することは困難と思われるのです。

 ただ、このように原油価格の伸び悩みが予想されるなかで注意が必要となってきているのが原油や石油製品の需給動向です。というのは、米国の主要産油地域ではハリケーン"グスタフ"の襲来、"アイク"の接近の影響を今だに引きずっており、28日時点でも同地の産油量は平常の71.2%にとどまっているからです。

 また、現地28日にはバレロエネルギー社が2008~09年に予定していた投資計画の一部を2010~11年まで先送りにすることを発表しています。他の石油業者による発表は伝えられていないものの、国内の需要低迷とこれに伴う先安感、そして金融危機の影響で新規設備投資費用の確保が困難になっている状況を考慮すれば、バレロエネルギー社に追随する動きが出てきたとしても不思議ではありません。そのため、かねてから指摘されていた米国の石油製品生産能力が改善に向かうのは少なくても2年~3年後となる可能性が高まっていると言えるでしょう。

 一方、米国外の石油生産の場合、非OPEC加盟国のなかで最大の産油国であるロシアでは、金融危機の煽りを受けて株価が急落した企業に対し、政府が外貨準備高を取り崩して資金を提供する状態に陥っているため、原油価格の回復が見られないうちは同国の増産にも大きな期待はできないように思われます。

 このような中、米国石油コンサルティング会社PFCエナジーの08年度におけるベネズエラの経常収支均衡には原油価格が平均で90.96ドル以上を維持する必要があるほか、ナイジェリアの場合には71ドル以上の価格が必要、との推計を発表しました。この推計を前提とすれば60ドル前半という現在のNY市場の価格はコストを割り込んでいることを意味すると同時に、上記2カ国が価格防衛の動きに出る可能性が高いことを示唆しています。

 世界的な経済低迷の影響で原油市場では需要低迷観測が根強い状況にありますが、価格低迷の影響で増産に動けない石油業者、産油国の現状、冬場の需要期という状況を見ると、次第に進行する供給引き締まりの傾向に注意が必要かもしれません。

平山順(ひらやま・じゅん)氏

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

株式会社日本先物情報ネットワーク

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